壊れかけてないエンタメRadio

引っ越しました。

エンタメ全般のごった煮放送。

ネタバレあり。変態しか出てこないバイオレンス群像劇。/悪魔はいつもそこに

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Netflix製作、9/16配信(公開)の「悪魔はいつもそこに」を鑑賞。

 

【あらすじ】

戦後の腐敗と暴力にまみれた田舎町。愛する者を守ろうともがく青年の周りで、邪悪な人間たちの思惑が渦を巻く。(Netflixから抜粋)

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ホラーと思いきや、人格再形成感動作。/ハッピー・デス・デイ

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2017年公開のホラー映画「ハッピー・デス・デイ」鑑賞。

 

【あらすじ】

毎晩飲んだくれながら、さまざまな男性と関係を持つ大学生のツリー(ジェシカ・ロース)は、誕生日を迎えた朝にカーター(イズラエル・ブルサード)のベッドで目を覚ますが、1日の出来事をすでに経験したような違和感を抱く。そして1日が終わるとき、マスクをかぶった何者かに殺されてしまう。しかし目を覚ますと、ツリーは再びカーターの部屋で誕生日の朝を迎えていた。(シネマ・トゥデイより抜粋)

 

【感想】

マスクを被った殺人鬼に殺されるたび、その日の朝のベッドで目を覚ます。を繰り返す、無限の地獄ループにハマってしまう超性格の悪い金髪女子大生ツリーの話。

自分がその立場になったら、ノイローゼになり精神崩壊してしまいそうな恐ろしい内容だが、かなり楽しめた。

ビジュアルからして、いかにもホラーという印象。しかし、マスクに殺されるたびに、主人公ツリーの腐り切った性格が改まって行く。という人格再形成ヒューマン・ドラマでもあり、最後には爽やかな感動を味わえる。

ツリー自身は、殺されても記憶だけは残っているので、いくたび殺されながらも経験を蓄積させながらマスクが一体何者なのか、無限ループから抜け出す方法を見つけ出そうとする過程も見ていて楽しい。

その原因を突き止め、ループを断ち、めでたし。と思い目覚めたツリーだが、まさかのまた同じ日の朝が…。のくだりは恐ろしかった。真犯人を見つけ出さないことには、彼女の無限ループが止まることは、永遠にない。

ただ、真犯人は意外な人物だったのだが、その動機が「え、それが理由?」って感じだった。まぁ、女子大生の寮内が舞台だし、そんなものなのだろうか。

また、タイムループに関しては全く説明がないので、今回に関しては「そういうものなんだ」と割り切って観るしかない。次回作でその謎も解けるのかもしれないけど。

…と、申し分のないエンタメ作品なのだが、やっぱりあの作品と話が被りすぎていて、既視感この上なかった。

それはトム・クルーズ主演の傑作「オール・ユー・ニード・イズ・キル」。地球を侵略しに来たボスエイリアンの返り血を浴びたトムが、それを境に死んでも同じ時間と場所で目覚めるという設定で、同じく記憶は残っているのでゲーム的感覚でループの世界から抜け出そうと奔走する。

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あとは「バタフライ・エフェクト」。これはとても悲しいラストだけど、主人公に拍手を送りたくなる、タイムループものの傑作。ぜひに。

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他にもタイムループものは多々あるので、調べてみると面白いかも。続編「ハッピー・デス・デイ2U」は1作目を超える感動作(!)とのことなので、今から観るのが楽しみ。

主人公ツリーを演じたジェシカ・ローズさんも魅力的。「ララランド」「500ページの夢の束」にも出演していたそうで。

あと、マシュー・モディーンの娘さん、ルビー・モディーンも。なんか似てた。カット・スロート・アイランド。

毎度目覚めるベッドの壁に「ゼイ・リブ」のポスターが貼ってあったのも好感がもてた。

 

德永英明の経済状況

多方面に経済的大打撃を与えているコロナウィルス、いまだ落ち着く気配がない。エンタメ界も同様で、ライブやイベントなどがほぼ消滅している。あるニュースではチケットぴあが9割売り上げ減。という耳を疑う数字も。

自分も今月は毎年恒例「サマーソニック」に行く予定だった。しかもヘッドライナーはThe1975!!! デビュー時から足繁く日本に来てくれていた彼らが、小さなライブハウスからスタジアムクラスクラスへ。そんな記念すべき今回、漏れなくコロナの影響で中止とあいなった。残念無念。

3回申し込んで全て外れた、Chara +YUKIのライブは中止。Chageの恒例のファンミも中止。(恒例で慣れていたけど、なきゃないで寂しい)

そして、德永英明もアルバムリリース&ツアー開催だった予定なはずが、これまたコロナの影響で延期。救いなのは、ツアー自体を中止にする例もある中、延期と言う形で時期をスライドしてくれたこと。何十本もの本数をまた調子しなおす。というのは想像したくもないほどの至難の技だろうけど、ありがたい限り。

そして、大人になると悲しくも気になるのが德永英明の台所事情。モヤモヤ病に倒れた時は、1年半くらいの活動休止だった記憶があるが、その間彼を含めスタッフは無収入。ファンクラブの会費に頼っていた部分も正直あった。という赤裸々な告白はいまだに記憶に刻まれているところだが、今回はどうなのだろう。

モヤモヤ病の時は、赤い太陽の日、青い銀河の夜のライブ音源を、「一期一会」という新曲もリマスタリングもされていない中途半端なベスト盤(?)を(買いました)、復帰後にリマスタリングされた(?)presenceというリマスターされた過去作のBoxセットなどがリリースされ、休止中の収入源になっていた気がする。中でも傑作は「Best of Glow」のライブ盤は今でも音源の中ではベストワンになるほどのテイクだと感じているが。

話はそれたけど「VOCALIST」が爆発的に売れて(600万人の購入者は今どこにw)彼らも少しは潤っているのだろうか。Instagramで弾き語りを披露しているほどの余裕ぶりなら、心配することはないのだろう。

個人的にはもう、遠い過去のように思えるビルボードでのライブを映像ではなく音源でリリースして欲しかった。ファンクラブ限定で。そうすれば、少しは活動できてない間の穴埋めにはなるだろうし、みんな、こぞって購入しただろうに。笑

しかし、今は既にレコーディングを開始して次に向けて動き出しているようなので、あとはコロナウィルスさえなんとか沈静化してくれれば…。という感じ。

僕らが生まれたあの日のように

整理整頓してたら、懐かしい記事出てきた。当時皆さん30代。ASKAは当時飛鳥涼名義。德永英明も歌手とは思えない佇まい。ホスト。(笑)

ボンジョヴィの来日公演は1996年くらいの奴。自分はチケット取れず、友達が取ってくれて晴れて行けることに。横浜スタジアムへ行ったのは後にも先にもこれが最後。

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ほぼ日手帳2021発売。今年も終わり。

www.1101.com

9月。ほぼ日手帳販売月。年を追うごとにカバーの種類が増えていってる気がするが、自分は毎度「MOTHER」シリーズ狙い。ほぼ、毎年カバー買ってる気がする。

 今年はどうか。趣向を凝らしたデザインが購買意欲をそそるのだが、なんと。昨年販売された「MOTHER2 キャスト レザー版」が今年も継続販売しているではないか。

 ほぼ日手帳では2年続けて同じカバーを販売するのは見たことがないのだが、売れ残ってしまったのか、反響が凄まじすぎたのか、今年も販売している。

 この手帳、昨年かなり悩んで結局、購入には至らなかった。2016年のカラー版の方を持っていたので。しかし、今年販売されていると知り、迷わず購入。(笑)

 過去、購入したカバーの中で最高値となる。これは、腫れ物を触る勢いで使わないとならない。経年劣化していく様を楽しみたいと思う。

 

あなたは、どのヒデアキ?

德永英明の楽曲で好きな曲は。という質問は多々あるかもしれないが、「好きなアレンジの曲は」?となるとまた、かってが違ってくる。自分は今思いつく限りだと、下記。

 

・永遠の果てに

生死の世界を描くなら、生音よりシンセ。スネアの音と、ロールドラム? のあの音、ピコピコした音がバックでずっと流れてるあの電子音、2番目から入るトライアングルの音がいい。終盤に向けて盛り上がっていう感じも良かね。アレンジは国美良一。一番好きなアレンジャー。

 

・FRIENDS

冒頭からショッキング。露骨にホラー映画「エクソシスト」をモチーフにした不気味なINTROはヒデアキのキャリアの中で他にはない。途中から入ってくるスネアドラムは力強くていい。ドラムは強いほうがいい。アレンジャーは佐藤準

 

・僕のそばに

やもすると、やり過ぎ感も否めないボーカルのエコーもいい感じ。間奏からはいる「ジャン!ジャジャン! ジャン!」(お分かりいただけるだろうか)のあのシンセの音もドラムも最高。アウトロも好きなので、実はもうライブではこの世界観をそのままステージに持ってきて欲しいくらい。ただ、Nostalgiaツアーのアレンジは別。あれは神がかっていた。アレンジャーは国吉良一

 

・魂の願い

この曲の山場は2つあって、2番歌い終わった後のあの鐘のなる音の間奏部分と、ラストの「がんばれ」の連呼。歌番組ではCDよりも多く頑張れと言っているバージョンは印象的だった。ライブで印象的なのは、音源化もされている「The Best of Glow」ツアーの一曲目。ラストの声量は何度聞いても鳥肌。倒れる直前に録音された、まさに魂込めた歌声だった。アレンジは瀬尾一三

 

・もう一度あの日のように

最初はキーボードだけだけど、1番歌い終えた後のシンセが入ってくる所は、鳥肌もの。ラストの「瞳のままで 心の中で もう一度あの日のように」は感動。レコーディングでも相当無理して歌ってる感じ故、最近のライブだと、当たり前だけど無理してないのがちょっとテンション、下がる。仕方ないのだけど。アレンジは瀬尾一三

 

・想い出にかわるまで

冒頭から切なさ哀愁漂いまくり。ラストの終わり方もいいですな。歌詞もいいけど、本人作詞ではない。アレンジは瀬尾一三

 

挙げるとキリがないけど、夢を信じて、とかDEARの中の曲も好きなものは多い。気づいている人もいるかもしれないけど、殆どが打ち込み系。80、90年代のシンセが台頭し始めた頃の楽曲、つまりピコピコ系好きが、德永英明のアレンジの好みにも反映されているのかもしれない。

 

ロクセットのこの曲、大好き。ピコピコ。

www.youtube.com

 

 

「もうわかったから。」と言われそうだけど、この曲も。

ハードロックバンドが突然、シンセメインの楽曲を作り

ファンを翻弄。結局は世界的ヒットになり、彼らの代表曲に。

youtu.be

徳永英明に関する新発見。

自宅のエアコンの効きが悪過ぎて死にそうだったので、大家に電話したら交換してもらえる事に。メーカーを聞かれて「National」と答えたのだが、改めてかなり古いエアコンだったのだな。と悟る。Nationalと言えばエオリア。自分のは違った。

ところで! エオリアのCM動画探してたら深夜に新発見。結構驚いた。知らなかったのは自分だけっぽいが、下記の動画の曲は「REALIZE」に収録されている「You're in the Sky〜Eolia〜」じゃないですか!

しかもアレンジ違うし日本語の歌詞! 「風のエオリア 」だけじゃなく、この曲もCMに使われていたのですね!まぁ、アルバム収録版もエオリア 連呼してる訳だから、この曲がCMに使われてる事に気が付けよ。と突っ込みたくなるけど、アレンジと歌詞が違うのは知らなかった。CMの方も瀬尾さんがアレンジしたのかな?

「恋人」もエオリアのCMソング。当初、曲の構成がサビ頭だったらしいが、德永英明型断固拒否して今の形になったとか。それで良かった。徳永英明の曲でサビ頭の曲はあまりなく、思いつく限りだと「愛をください」あたりか。

Nationalは消えどもエオリアは不滅なのだった。

https://youtu.be/kQVb_cSVf3A

スポ根映画の傑作!/ウォーリアー

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2011年製作、2015年日本公開の「ウォーリアー」鑑賞。

 

【あらすじ】

アル中の父親から逃れるため母親と一緒に家を出たトミーが、14年ぶりに父親のもとを訪ねてきた。学生時代にレスリング選手として活躍していた彼は、高額の賞金がかけられた総合格闘技イベント「スパルタ」に出場するため、元ボクサーである父親にコーチ役を依頼する。一方、かつて格闘家の選手だったトミーの兄ブレンダンは、現在は教師として働きながら妻子を養っていたが、娘の病気に高額な医療費がかかり自己破産の危機に陥ってしまう。ブレンダンは愛する家族を守るため、総合格闘技の試合で金を稼ぐ事を決意する。(映画.comより抜粋)

 

【感想】

冒頭から名作の予感しかしないこの作品、なんと日本では公開されずにDVDスルーになったというかなりショッキングな経緯を持つ。誰が気づいて日本に持ち込んで来てくれたのかはわからないが、その人に感謝したい。

 結果から言うと、「ロッキー」をも凌ぐ。と言ってしまっていいほどのスポーツ映画の傑作と表現したい。自分が観た中にも傑作と呼べる「リアル・スティール」「ダンガル、きっと強くなる」も超えそうな勢い。

リアル・スティール」は人間ではなくロボットを操作してボクシングをすると言う異色だがヒュー・ジャックマン演じる父親失格な男と認知していない実子の男の子の親子の絆再生胸熱スポ根映画。

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「ダンガル、きっと強くなる」はインド産のレスリング映画で、伝説的なレスリング選手が息子を屈強なレスリング選手に育て上げる事を夢見ていたものの、生まれてくるのは全部女性。ならば女性をレスリング選手にしてしまおう。と言うインドに実在する女性レスラーの話。レスリングのルールは知らずとも、映画を観ているうちに叩き込まれ、ラストには一緒になって本当にスポーツ観戦をしていると錯覚させるほどの熱狂が待っており、これも名作。

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その2つの作品を超えるものに出会おうとは。(観たばかりで熱量が高いのも確かだけど)

この映画はボクシングでもレスリングでもなく、総合格闘技。急所以外であれば何処を殴ろうが、蹴ろうが、投げ飛ばそうが、関節技をかけようが自由。ある意味本当の闘いが繰り広げられる。

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ストーリーは最初、ニック・ノルティ演じる元アル中親父と、息子のトミー(トム・ハーディ)がスポーツを通して親子の縁を再生させる話だと思わせておいて、実はその兄(ブレンダン)との確執も同時に描くと言う意外な展開。また、トミーには隠された過去があり、それがラストに向かうにつれて明らかになり、最後の山場で大盛り上がり。シンプルなようで意外と伏線が張られてはいるものの、ちゃんと最後には回収してスッキリ胸熱。

スポーツ映画の定番、ラストには大きな大会があり、そこで優勝できるかどうか…?と言う展開はこの映画でも踏襲しているが、そのラストの対戦カードが!!! どっちが勝つのか? どっちに勝って欲しいのか? と観る者を苛め抜くドS要素も。残念なのは別バージョンのポスターでそれをネタバレしている事なのだが、この部分は伏せておいた方が、より映画を楽しめると思う。

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そして、注目のキャスト。ブレンダン役のジョエル・エドガートンは引退した身体に鞭打って娘の医療費を払う為に一攫千金を狙う中年男性を演じる。再び金網に囲まれたリング(オクタゴン)でかつての闘志を静かに燃やすシーンは胸熱。一発KOタイプではなく、地道にマウントを取り、ギブアップを狙って行く知性派。

対する弟のトミーは元々の性格なのか、戦争での経験とトラウマがそうさせたのか、多くを語らず、スパルタで華麗な勝利を収めても、そそくさと引き揚げてしまうし、一家離散させた張本人である元アル中の父親を「スパルタで勝ち抜くために利用するだけのコーチ」と割り切り一緒にトレーニングをしたり。何か闇を抱えたキャラ設定。そんなトミーをトム・ハーディが佇まいだけでそのキャラクターを体現。

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もう、ラストの彼を観ているだけで泣けます。セリフは全然ないのに、トミーの心理描写をしてしまう芸達者ぶり。「マッドマックス怒りのデスロード」も、そんな役だった。

と、スポーツ映画としてのストーリー、感動や総合格闘技の試合の編集の巧みさ、演者のレベルの高さが相まって、スポーツ映画としてはかなりのハイレベルの域にまで昇華している傑作・名作と言っても過言ではないと思う。とにかく素晴らしい。ぜひに。

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ホラーの古典を現代風にアレンジ。/透明人間

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H・G・ウェルズが1897年に発表した小説『透明人間』を現代に置き換えて製作された「透明人間」を鑑賞。

 

【あらすじ】

天才科学者で富豪のエイドリアン(オリヴァー・ジャクソン=コーエン)の恋人セシリア(エリザベス・モス)は、彼に支配される毎日を送っていた。ある日、一緒に暮らす豪邸から逃げ出し、幼なじみのジェームズ(オルディス・ホッジ)の家に身を隠す。やがてエイドリアンの兄で財産を管理するトム(マイケル・ドーマン)から、彼がセシリアの逃亡にショックを受けて自殺したと告げられるが、彼女はそれを信じられなかった。(シネマトゥディより抜粋)

 

【感想】

ゲット・アウト」などのサスペンス映画で手腕を発揮したクリエイターが最新のVFXを駆使して現代風に再構築し「透明人間」を製作した。と聞けば楽しみにならずにはいられない。

「透明人間」で真っ先に思い出すのが2000年に製作されたポール・ヴァーホーベン監督による「インビジブル」。こちらは小学生の頃に「透明人間になったら、こんなことをしてみたい」という想いを見事に可視化してくれている。ヴァーホーベンらしい演出で、女性トイレを覗き見する、女性の体を触る。(笑)など、最初はタチの悪い悪戯だが、どんどんエスカレートしていって…。という分かり易いエンタメ色の強い快作。

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が、20年経った現在の透明人間は「インビジブル」の様な外的な暴力で主人公を支配するのではなく、精神的に追い詰めていくという陰湿な内容。「相手」は透明であることの性質を利用し、周りの人間の信用を失わせ、セシリアを社会的に孤立させていく。彼女が精神的に疲弊していく過程をエリザベス・モスが見事に演じている。

冒頭のクレジットから魅せてくれる。嵐の海に浮かぶ岩肌。波がザブザブ降りかかるのだが、そこにスタッフの名前が。波がかかっている間は文字が見えるが、波が引くと文字は消え、また次のスタッフの名前が…。と、コンセプトの「透明」を意識した演出が小気味いい。

カメラが断崖絶壁を登って行くと、豪邸が。そして主人公のセシリアがベッドで寝ている場面に切り替わる。が、彼女は眠っている訳ではなく、何やらただならぬ雰囲気。同じベッドで寝ている男性に気付かれぬよう、そっと抜け出し、豪邸からなんとかして脱出しようと試みる。と、のっけからハラハラドキドキの脱獄もの。傑作の予感を感じさせる。

話が進み、透明人間がいるのか? いないのか? と思わせるシーンはカメラアングルで恐怖を演出。そこにはセシリアしかいないのだが、カメラはそこにもう一人存在するかのような二人分の人物が収まるようなトリミング。特に何事も起きないのにカメラアングルだけで人をこんなにも怖がらせることができるのか。と、昔から使われていた手法なのかもしれないけど、今見ると逆に新鮮だったり。

そしてラストに向けて、セシリアは追い込まれ精神の不安定さはエスカレートして行くのだが、もう誰が犯人なのか? 実は別の人物だったのではないか? 自分の思考が信じられなくなってくるのだが、それはみてるこちら側も果たしてこの結末が正しかったのだろうか。と主人公と同じ猜疑心に陥る。

「透明人間」という題材を現代に置き換えるとSF映画ではなくサスペンススリラーになってしまう。また、DVを受ける女性という設定も相まって現代の女性が晒されているいろんな問題も浮き彫りにする。という眼から鱗な一本なのだった。

 

 

 

浅田次郎

浅田次郎の「プリズン・ホテル」「オー・マイ・ガァッ!」に続き、とある作品を読んだ。これに登場する地名や駅名、施設は実在なのだが、全てが自分と縁の深い場所ばかりで驚いた。さらには、作品のテーマソングがアメリカのフォークシンガーの曲で、自分にとっては思い出の曲だった。詳細書いてしまうと、自分の生活圏をバラすことになるので、なんともあやふやな内容だけど、とにかく色々驚いた。

物語自体は、先に挙げた作品がコメディだったのに対し、今回はかなりシリアスで切ない内容。舞台設定だけでなく、内容も自分とリンクする部分があり印象に残る作品だった。