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(一部ネタバレあり)心の真ん中が痛い。/ 朝が来る

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2020年製作/139分/G/日本
配給:キノフィルムズ

ドラマ化もされた直木賞作家・辻村深月の小説を映画化。特別養子縁組で男児を迎えた夫婦と、子供を手放す幼い母親の葛藤と人生を描く。キャストは『八日目の蝉』などの永作博美をはじめ、井浦新蒔田彩珠浅田美代子ら。『殯(もがり)の森』などの河瀬直美監督がメガホンを取り、『凶悪』などの高橋泉が河瀬監督と共同で脚本を手掛けた。(シネマトゥデイより抜粋)

【あらすじ】

子供に恵まれなかった栗原佐都子(永作博美)と夫の清和(井浦新)は、特別養子縁組の制度を通じて男児を家族に迎える。それから6年、朝斗と名付けた息子の成長を見守る夫妻は平穏な毎日を過ごしていた。ある日、朝斗の生みの母親で片倉ひかりと名乗る女性(蒔田彩珠)から「子供を返してほしい」という電話がかかってくる。(シネマトゥデイより抜粋)

 

【感想】

宣伝の手法としてはミステリー色強めだけど、蓋を開けてみるといろんな人に見て欲しい。と思えるヒューマンドラマという印象が強い。良作。

 

ーー養子に出す家族、受け入れる家族それぞれに事情があるーー

子供が欲しかったけど、授かれなかった夫婦と、子供を授かったけど、育てることを許されなかった母親の話。心の真ん中が痛い。とはまさにこのこと、德永英明も上手い歌詞を考えたものだ。かつても、なんかの映画の感想でこの言葉を拝借した気がする。

 

ーー幸せな夫婦に突きつけられる避けようのない事実ーー

観ていて苦しい事この上ない。2部構成からなる本作、1部は永作博美井浦新演じる栗原夫妻に降りかかる、「永遠に自分の子供は授かれない」という現実。旦那は離婚してもらっても構わない。とまでいう。同性の自分が彼の立場になったらどんな気持ちだろう。

 

ーー団長の思い出自分の子供を手放さざるを得ない中学生の母親ーー

さらに気持ちが辛くなる第2部は養子縁組で子供を提供する側の片倉ひかり。中学生の彼女は妊娠。家族からは猛反対。堕胎する時期も過ぎたため、産んですぐ、半ば強制的に養子縁組に子供を出すことに。悲しいのは、ひかりは「子供を育てたい」と願っていること。まだ中学生の彼女には経済力も反対するだけの力もなく、断腸の思いで子供を手放す。個人的には孫として育てればいいのでは。と思ったりしたが、親が世間体を気にしてそんな選択肢はなかったのだろう。

 

ーー色々と考えさせられるラストーー

 ここから先は更なる展開が待っているが、それはぜひ劇場にて。心の痛みはピークに。果たして、4人に幸せは訪れるのだろうか。

監督の本当のメッセージは、エンドロールが終わる20秒ほど前から始まる朝斗の声。これにこの作品の意図の全てが込められているので、絶対に退席してはならない。

 

ーー徹底した役作りーー

 出演者は徹底した役作りを求められた。永作博美井浦新と朝斗役の小役は本当に数ヶ月間タワーマンションに住み家族として生活。ベビー用品一緒に買いに行ったり本当にデートしてたそうですよ。その最中にスタッフがやってきて、撮影してまた元の生活(共演者たちとの)に戻る。

片倉ひかり役の蒔田彩珠は18歳だが、監督が通っていた中学校に本当に通い、部活動も数ヶ月したそうで。恋人役の役者(アスアブ鈴木の引きこもり!)とも実際にデートしたとか。

それがさも、珍しいかのように言われているけど、海外の話聞くと、それが当たり前に行われているので、日本もそういう徹底した事をしたらいいと思う。

 

ーー徹底した役作り故の(?)リアリティー

出演者は演技していると言うより、ドキュメントみたいな雰囲気も漂う。中盤の養子縁組のテレビや体験者たちは役者でなく、多分素人さんなのではないか。と疑う。永作博美と子役のやりとりも自然だった。

 

ーー片倉ひかり役がすげぇーー

永作博美の演技は言うまでもなく素晴らしかったのだけど、第二部の片倉ひかり役の蒔田彩珠に度肝を抜かれた。今年の日本アカデミー賞は彼女で決まりなのでは。と思うレベル。冒頭の清楚な中学生から養子縁組を機に堕落していく様を容姿も相まって体現している。中学生で妊娠、家族と仲悪くなって落ちぶれて…って並大抵のことじゃない。それを演じるってすごい責任とプレッシャーだと思うのだけど、彼女を通して似た体験をした人たちの想いがひしひしと伝わってきた。感動。

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ーー映像が美しいーー

光を意識した映像が多く、逆光が美しい。特に片倉ひかりと恋人が愛し合うシーンは美しい。こんなに愛し合って生まれた子供、育てたかっただろうなぁ。泣く。

 

ーーひかりと朝斗の名前(ネタバレ)ーー

産んだひかりと栗原夫妻が名付けた朝斗をつなげると「朝と光」。タイトルにもつながってくるし、主題歌も「朝と光」。ちょっとした小ネタだけどハッとする。

 

今年の邦楽ナンバーワン。永作博美の出演作、「八日目の蝉」含め良作多い。こちらも子供がテーマの悲しすぎるけど、名作の域の作品なので、是非に。

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↑こちらは号泣必須。必見。ぜひ。

 

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↑心の真ん中が痛い。連呼する名曲「抱きしめてあげる」