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喧嘩が国を巻き込む大騒動に。/判決、ふたつの希望

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2017年製作/113分/G/レバノン・フランス合作
原題:L'insulte
配給:ロングライド

レバノン産映画「判決、ふたつの希望」観賞。劇場で観賞予定だったけど、叶わなかった。が、観ている最中に「映画館で観るべき映画」と後悔した。Amazonプライムにて観賞。料金フリー。

https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B07NZ5L7LB/ref=atv_dp_share_cu_r

 

【あらすじ】

レバノンの首都ベイルートパレスチナ人のヤーセル・サラーメ(カメル・エル・バシャ)とキリスト教徒のレバノン人トニー・ハンナ(アデル・カラム)が、アパートの水漏れをめぐって口論を始める。さらに、ある侮辱的な言動が裁判に発展。これをメディアが大々的に報じたことから政治問題となり、さらには国中を揺るがす騒乱が巻き起こる。(シネマトゥデイより抜粋)

 

【感想】

すごい映画を観せてもらった感。映画として、法廷ものとして、エンタメ要素も盛り込まれた構成で見応えがある。レバノンという日本ではあまり馴染みのない国の実情や悲しい過去、難民問題を勉強できる、一石十鳥、上質な肉厚オススメ映画。

予備知識なしで観たので、あまりの超絶展開にハラハラ。冒頭はアパートの住民と工事業者との大人気のない喧嘩が始まり、「謝れ、謝りたくない。」の水掛け論に。そしてついに暴力沙汰へ。争いは法廷に持ち込まれる。裁判沙汰にした事で国を、大統領をも巻き込む大騒動に至る経緯の見せ方がすごく上手く描かれていて引き込まれた。

冒頭、工事業者が好意で(?)修繕してくれたアパートの排水管を主人公の一人トニーがいきなりハンマーでぶっ壊すという意味不明な行動に嫁もドン引き。トニーは何故かすごい形相でブチ切れモード。ただの感情的な頑固者らしく、嫁は妊娠もしているのに、この夫婦は大丈夫なのか?と心配するレベル。だが、トニーが激怒する理由は彼の過去に関係しているのだったが、これが明らかになるのはラストになってから。

振り上げた拳を法廷で振りかざしてやろうと息巻いていた二人だが、弁護士が絡むことで両者とも「えっ」となる。弁護士は法廷で勝つ為に相手の弱点を徹底的につく。双方の知られざる過去が次々と法廷で暴露されさすがの両者も「やりすぎだ」と言い寄るも「君は勝ちたいんだろう?」という弁護士に任せざるを得ない。が、この両者が雇った弁護士にもサプライズが!!!

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裁判が進むにつれ、マスコミが騒ぎ出し、ついには国民がデモを行い、大統領までもが動き出す事態に。そのせいでトニーは嫌がらせを受けるように。しかし裁判が進むにつれ、二人の間に変化が。裁判が終わった後、トニーがヤーセルの車を直してあげるところ。ふたりの距離が縮まる、すごく良いシーンだった。ちょっと落涙。

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↑軍人にサポートされながら裁判所を後にするふたり。

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↑裁判所で車が故障し帰れなくなったヤーセル(右)を気遣うシーン。

…と、映画の内容は申し分ない上に、トニー演じるアデル・カラムさんが印象的だった。最初はただのキレやすいおっさんにしか見えなかったのが、彼の過去を知ることでとても悲しく思えてくる。冒頭にキレキャラから後半にかけての変化が見もの。

法廷ものというと判決の結果がとても重要で、観てるだけの自分もハラハラしてしまうのだが、この映画は結果よりもふたりの関係が少しだけ縮まった事が「希望」へと繫る。という作者のメッセージのような気がして、あまり気にならなかった。

自宅で映画を観るときはエンドロールは観ないのだが、この作品は余韻がすごくて正座してずっとテレビの前で正座をしていた。(笑)本当に凄い映画だった。是非に。