【ネタバレあり】顔面ぶん殴られた。/岬の兄妹
【あらすじ】
港町に暮らす良夫(松浦祐也)はある晩、自閉症の妹の真理子(和田光沙)が、男に体を許して金銭を受け取ったことを知る。そのころ、良夫が勤める造船所でリストラがあり、良夫は足が不自由であることを理由に辞めさせられてしまう。困窮した良夫は妹の売春のあっせんを始めるが、次第に妹の喜びや悲しみを知り困惑する。さらに売春のことを知った友人が、良夫に忠告しに家にやって来る。(シネマトゥデイより抜粋)
【感想】
今年一年くらいは傷が残ろうか。
というくらい、顔面ぶん殴られた様な気になった衝撃作。
貧困は人を変える。
そしてそれを抜け出すためなら自分の中の倫理観まで変えてしまう。
主人公良夫は足に障害があり、それを理由に会社をクビに。
妹の真理子は知的障害を患っている。
職を失い、家賃は払えず、電気は止められ、ゴミ箱を漁るという
行き着くところまで行き着いてしまった兄妹。
良夫はついに、妹の真理子に売春をさせて
日銭を稼ぐことを決行する。その描写の生々しさや、
「売春させて何が悪い?」とまで言い放つ
良夫の心に抱える壮絶な葛藤よ。
そしてついに、真理子に最悪な事態が起こる。
役者も、よくこの役を引き受けたなぁ。と。
特に妹の真理子役の和田光沙さん…。
甘っちょろい部分まったくなし。ゼロ。
壮絶さと残酷さだけがこの映画の構成要素。
もう、ケツからウンコ出して掴んで相手の顔に塗りたくるシーンは
笑っていいのかどうしたらいいのか。
皮肉なのは、売春をさせた後に
良夫が真理子の人間性を垣間見れる様になったこと。
謎だったのはラスト。
真理子はいつもの様に何処かへ。
良夫が町中を探し回ると真理子は海の岩山に登っていた。
良夫が彼女に声をかけるのだが、様子がいつもと違う。
自閉症の真理子の様子ではない。
なんだか「普通の人」の様な佇まいなのだ。
???これは真理子なのかな?と思っていたら
良夫の携帯電話に連絡が。
電話に出ると、良夫が「はっ」という顔をする。
そこで映画は終わる。
これ、どういう意味なんだろう。
真理子は明らかに普通? な感じだった。
いつもなら笑いながら振り向いたりするのに。
謎とでかいアザを残した衝撃的な映画だった。
この格差問題、他人事じゃないから怖い。
昔から「自分はいつなんどき、ホームレスになるかわからない」
という恐怖心みたいなのはあったし
会社の帰りとか、巷でホームレスの人を見かけると
何だか恐ろしく思えてくるし。